「捨てるという概念を捨てよう」
BY 寺下 理恵(テラサイクルジャパン合同会社)
「捨てるという概念を捨てよう」こんな言葉を聞いたことはあるだろうか。これは米国発祥でリサイクル企業「テラサイクル」のスローガンだ。テラサイクルは、リサイクルが困難なパッケージなどの廃棄物を世界各国で回収し、さまざまな製品に再生する、いわば「リサイクル界のパイオニア」企業といっても過言ではない。創業者兼CEOのトム・ザッキー氏は、大学2年生の時にテラサイクルを立ち上げ、ミミズの堆肥を肥料にし、それを使用済みペットボトルに入れて販売するというユニークなビジネスをはじめた。その後、「ごみをリサイクルする」というコンセプトを思いつき、ポテトチップスの空き袋、飲み終わりのジュースパウチ、ペットフードの空き袋など、「捨てる以外に用途のない」と思われていたものを回収し、プラスチック製品など新たな製品にリサイクルを実現してきた。
テラサイクルは2014年に日本でもオフィスを立ち上げ、日本国内ではすでに「たばこの吸い殻」、「使用済みハブラシ」、「使用済みメイクアップ用品」を回収し、リサイクルを成功させている。
海岸ごみ全体の4分の1がたばこの吸い殻である
リサイクルと海・・・一見、関連性がないように思うかもしれないが、海をこよなく愛するBeach Pressの読者にとっても他人ごとではない。米国の環境保護団体、オーシャンコンサーバシーによると、海岸などで散乱するごみ全体の4分の1がたばこの吸い殻であることをご存知だろうか。ビーチ清掃にいそしむNPO団体にとっても、たばこの吸い殻のポイ捨ては、つねに頭を抱える問題となっている。そこで清掃活動を通して、たばこの吸い殻だけを分別し、テラサイクルに発送しリサイクルに貢献しているNPO団体もある。
そんなテラサイクルが、世界規模で新たなリサイクルの取り組みを発表した。その名も「ビーチ・プラスチック・プロジェクト」。海洋漂着ごみとして海岸、ビーチに流れ着いたプラスチックごみを回収し、リサイクルしてP&G社の「Head & Shoulders(日本ではh&sブランド)」のボトルに採用するのだ。P&G社はこの発表にともない、ブランドカラーであった白いシャンプーボトルから、リサイクルプラスチックを使うことで、ボトルの色をグレーに変更した。
ここでも驚くべき数字がある。エレンマッカーサー財団によれば、2050年までには海洋において、重量で魚よりも多くのプラスチックが存在する可能性があるという。海を潜ると魚ではなく、プラスチックごみが回遊する・・・そんな海は決して見たくだい。
テラサイクルでは、再生シャンプーボトルのように、本来の用途を終えたプラスチック製品が、さまざまな工程を経て新たな用途として生まれ変わるプラスチックを「ストーリープラスチック」と呼んでいる。「ストーリープラスチック」が新たな物語をつくり出し、「捨てるという概念を捨てる」ことが、うつくしい海をいつまでも保ちつづけるきっかけ作りになるかもしれない。