日本は日本でいろんな問題があるけれど、戦争というエクストリームな環境がじっさいにどういうものなのか、現代日本人は体験したことがない。でも世界には戦争が日常な人たちもいて、バリでそんな人たちから戦争の日常を聞き、知りたい人もいるのではないかと思ってブログ書いてる。いつもより少し長くなる(4800文字)けど、かなりおもしろい(起きてることはまったくおもしろくないが)ので読んでみて。
宿に、私以外にもわりと長期滞在中の26歳と24歳のウクライナ人のカップルがいる。言葉がロシア語っぽいのでてっきりロシア人だと思っていて、どうせ無愛想だろうとテキトーにはろ〜だけ言って放置していたら、彼女の方がやたらフレンドリーに話しかけてきてくれて、どっから来たんだと聞いたらウクライナだと。
二人はつねにキッチンでなんだかおいしそうなものを作っている。
「ボルシチっていうスープ、知ってる?」
「ロシアのスープだよね?」
「ちがうのーーー!!元はウクライナのスープなんだけど、ロシアに盗まれたw」
そして、よかったらどうぞ。ってスープ分けてくれて、それからなんだか知らないけど毎日わりと話すようになった。

毎日おいしそうなもの作ってていつも分けてくれるの。やさしい。左のウクライナの定番ポテトサラダはきゅうりのピクルスが効いてておいしい。右はそばの実で、日本でいうところのお米の代わりによく食べるらしい。おいしかった!
ウクライナといえば戦争の真っ只中なのに、バリくんだりで何してんだ?って話になった。すると、聞きたくない人も多いと思うけどと言いながら堰を切ったように戦争の話をし始めた。
「何が起きてるか本当のことなんてみんな知らないから私は知ってもらえてうれしい」
と言いながら、爆撃風で家の中がぐっちゃぐちゃになった友人の家の動画や、遠くで爆弾がピカーって爆発するベランダからの映像、爆撃で跡形もなくなった街の写真など見せてくれたが、マジでヤバい。拾い画像じゃなくて全部友人から送られてきたものだった。
私はテレビはないし、ニュースも当然見ないようにしているので、ウクライナの戦争についてどんな情報が流れているのか全く知らないが、これは全部ウクライナから逃げてきた二人から聞いた話。ウクライナに今住んでいる人たちの毎日だ。
「2014年からずーーーーーーっと戦争やってるから、爆弾が飛んでくるのも日常茶飯事で、もちろん怖いけど、人々は普通の生活を送らなければならないでしょ。仕事にも行くし、学校にも行くし。」
そんな彼らの日常はこれだ。
・最近の爆撃はほとんどがドローンで、どこか遠くの室内で誰かがコントロールしている。
・長距離爆弾は音速より速いらしく、警報がなるより先に爆発している。街中に落ちるとヤバいので、軍隊がなんとか森や林の上で迎撃して爆破させる。
・それでも避けられずに落ちてしまう爆弾も当然あって、一般市民が被害に遭っている。
・爆発時の爆風がすごすぎて、直接爆弾落とされなくても爆風で飛んでくる割れたガラスなどで死んでしまう人も多い。
・迎撃の爆弾なのか、攻撃の爆弾なのかも音で聞き分けられるようになった。
・窓の外を見たら遠くにドローンが飛んでいるのは日常茶飯事で、近くなければとりあえずは安心だ。
・国境近くでは誘拐が横行、特に子供が誘拐されてレイプされている。
・最近のドローンは核爆弾を搭載することも可能らしい。
こんな中、学校や仕事に行く。
二人はなぜバリに?と聞いたら、徴兵を逃れてきたという。彼は26歳。25歳になると徴兵対象なのだそうだ。だから若者たちは見つからないように家から出られない。違法の脱出はリスクがめちゃくちゃ大きい。捕まれば罰として最前線に配属され、結局命を落とすし、人身売買や詐欺の危険性もある。だから徴兵を恐れる多くの若者は、家の中で自由も未来もない生活をしている。
そんな中、彼は自由を求めて違法脱出という一か八かのリスクを取ることにした。
ところで、このカップルの出会いは流行りのマチアプティンダー(笑)なんだが、なかなか不思議な出会い方をしてる。中国語を勉強している彼女は、中国語を話せる相手を探していたそうで、表示されるのはほとんど中国人だったのに、ある日なぜか彼の写真が出てきた。イケメンキン肉マンがタイプらしいのに、顔写真もない彼とやりとりするようになったのがきっかけだ。出会ったのは一年半前。彼が脱出したのが約9ヶ月前。彼女がいなかったら脱出は成功していなかったかもしれない。そして彼女の方は中国に行こうと思ってたのが、彼と出会ってなぜか世界中を旅する生活が始まった。パートナーとの出会いとタイミングってほんと不思議だし、人生変えてしまう。
ウクライナ脱出劇
昨日の夜聞いたんだけど、聞き終わって、え?何かの映画?!って脳みそ沸騰した。それくらい非現実的で、私には想像もできない話だった。蚊に噛まれまくったが、話がすごすぎてそれどころじゃなかった。
違法脱出にはどうやらブローカーがいるらしい。ブローカーからオンラインで脱出用の地図を購入する。その地図は毎回違うものだ。そして金額もブローカーや中間業者の数でピンキリ。彼はかなり安かったそうで、US$3500。日本円だと50万くらい?1万ドルくらい払う人もいるらしい。ウクライナ人の平均月給は$500程度だそうで、彼らにとってそれがどんな金額かは想像つくだろう。支払いは成功報酬。なぜなら捕まらずに脱出できるかどうか分からないから。無事国境を超えられたら暗号通貨で支払いする。
まずそのブローカーから、脱出のパートナー(若い男性)を紹介された。そして、買い物リストを渡される。サーモグラフィに感知されないための赤外線遮蔽材を使った衣服と二人乗りのポンプ式ボート!足がついてはいけないのでそれは彼女に買ってもらう。彼より前に脱出した友人が、長い道のりだから水をたくさん持っていけというので、かなりの荷物になった。
脱出完了するまでブローカーがテキストで指示を出す。まずは電車に乗ってとある街まで行けと指令が出た。大きな街の手前の田舎の駅で降りるよう指示された。駅を出たらタクシーが待っていて宿に連れて行かれた。タクシーの運転手はブローカーに雇われている。
宿についたら、女主人がこんな話をした。
「あんたたちの前にも同じような若い二人組が泊まってたんだけどねえ、彼らはいつチェックアウトするのか分からないと言って、ある日突然、多分夜中にいなくなって、部屋の鍵はカーペットの下に隠してあったんだよ。あんた達は出てくときはちゃんと教えておくれよ。」
彼も同じようにカーペットに鍵を隠して、ブローカーに指示された日、暗闇の中宿を出発した。林を越えて川へ向かえと言われ、50万円で購入した地図を頼りに二人で真っ暗闇の林へと向かった。林の上空も逃亡者を捕まえるドローンが飛んでいるので、二人は購入した熱遮断の服を頭から被った。
林の中を何時間も歩いてようやく川に着いたら、指示があるまで待機しろといわれた。ウクライナの11月はめちゃくちゃ寒い。焚き火をすることもできず、ただひたすらブローカーからの指示が来るのを何時間も待った。マジで凍えそうに寒かったと言っていた。彼は、このブローカーは多分軍人だと思うと話す。内部事情を知っているから、どこが危険でどこが安全なのか指示することができるのだ。
ありえない寒さの中、何時間も待って、ようやく川を渡れという指示が出たので二人で急いでインフレータブルボートに空気を入れた。外気温は5度くらい、水温もありえないほど冷たかった。もしボートから落ちたら絶対死ねる寒さだった。向こう岸までは多分15-20分くらい。舵を取ったのは彼で、漕ぎ始めて20メートルくらい進んだら、なんと3つの仕切りがあるボートの真ん中が壊れている分かったらしい。彼は岸に戻って空気を入れようと提案したが、パートナーが急いだ方がいいというのでそのまま突き進んだ。
こんなに速く漕いだことないってくらいものすごいスピードで暗闇の川を漕いだ。彼は向こう岸に背を向けて漕いでいたので分からなかったのだが、20分くらい漕いでやっと向こう岸についたら、目の前に巨大な岩壁が広がっていた。
ブローカーが、ボートは空気を抜いて持って行けといった。置いて行くと逃げた痕跡になり捜索されてしまうからだ。ボートはありえないほど重いしその上大量の水も担いでいる。しかも暗闇。足は水に濡れて冷え切っている。1時間以上かけて二人ともなんとか危険すぎる岩壁を登り切ったら、目の前にとうもろこし畑が広がっていた。
「とうもろこし畑は簡単だったよ〜。とうもろこしは背が高いからね。見つかりにくいでしょ。それで、水なんだけど、マジであんなにいらなかったんだわ。水持ってけと言った友達が脱出したのは真夏だったんだわ。僕ら11月でしょ。寒くて全然喉乾かなかった。いい加減にしてほしいわw」
って、爆笑しながら話してくれる。
とうもろこし畑を超えたらついに国境だった。国境の周りには3-4メートルの落とし穴が掘ってあった。「あの岩壁に比べたら落とし穴登るのはは楽勝だったわ」そして二人はとうとう国境を超えてモルドヴァに入国した。
モルドヴァでは迎えが来ることになっていた。
「迎えの男に居場所を伝えたんだけど、わかんないっていうわけ。あのね、めっちゃくちゃ小さな村なのよ。この宿(宿泊中の私たちの宿)の敷地より小さいくらい小さいんよ。なのにそんなとこ知らねえっていうんだわ。自分の村なのに。どゆことよ?!」
「そんで、何十分も待たされてようやく迎えのトラックに乗ったんだけど、それがさ、運転手の兄ちゃんはどうやら明け方に村をうろついていた二人の男を見つけて、”おい!!おまえら!急いで乗れ!!早く!!”って声かけたんだってよ。突然車に乗れと声かけられた二人はびっくりしてとりあえず車に乗り込んだらしんだけど、話し始めたらモルドヴァ語を話すからびっくりして降ろしたって言ってた。いい加減にしてほしいわ!笑!」
って無邪気に笑ってる。
そしてトラックの男にモルドヴァの小さな村の宿に連れて行かれ、そこで数週間過ごしたそうだ。モルドヴァの人たちは、ウクライナの事情も分かっているので、彼らのことも受け入れてくれていたという。
「でもできるだけ身バレしないようロシア語を話すようにしてたんだけどさ、ある日スーパーで買い物した時に、パートナーが、ありがとうを間違えてウクライナ語でダックユーって言っちゃってて焦ったわ。ロシア語はスパシーバやん。笑!」
と、とにかく無邪気によく笑う。
彼はポーランドに親戚がいて、ティンダーのガールフレンドともポーランドで待ち合わせてアジアに出る予定になっていた。ここからちょっとうろ覚えなんだが、ポーランドに行くのに何らかの書類が必要だったようで、モルドヴァ警察に行った。すると警察も事情をすべて理解してくれてめちゃくちゃ協力的だったそうだ。そして無事ポーランドへ移動、彼女と合流して飛行機乗ってアジア放浪の旅をして、私と出会ってこの話をしてくれた。
「僕はほんとにラッキーだった。僕の後に国境越えようとした人は捕まってしまったらしい。捕まったら罰として前線に配属されるんだ。そうなったらもう終わり。」
彼は10年パスポートを持っているが、違法で国を出たのでこれが切れたらもちろん更新はできない。彼女と家庭を持って子供を育てる話もしているけど、未来の計画がまったく立てられないと言っていた。彼の家族はウクライナでブルーベリー農園をやっている。本当は家に帰ってブルーベリー農園を経営したいんだそうだ。緑に囲まれたのどかな彼の村の写真は本当にうつくしくて、戦争が終わったらいつか行ってみたいと思った。だからほんとに早く。もうこんなくだらない戦争やめてくれ。
「日本はウクライナにめちゃくちゃ支援してくれてるからほんとに感謝してるよ〜。ありがとう」って言ってた。
こんな話、旅してなかったら聞けない。こういう話を聞くと私の当たり前は一瞬で崩れ去る。だから旅が好きなんだ私は。こんな狂った世界、私一人の力では平和にはできないけど、だからやっぱり、身近にいる一人ひとりになんとか平和になってもらうために今やってる仕事はつづけて行かなきゃと改めて思った。
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