ボリビアの法律「母なる地球の権利」

earthrise

文/西上依里
ボリビアってどんな国かご存知ですか? 周りを陸地に囲まれた、ラテンアメリカの中でもひときわ開発水準が低い国で、豊かな天然資源を持つのに非常に貧しい国であり、「黄金の王座に座る乞食」と形容されたこともあるような国。

そんな貧しい国ボリビアですが、ここにはとてもステキな法律があるんです。国としてゴキブリにも人間と同じ権利を与えるという法律。動物や植物と言った、全ての自然に人間と同じ権利を与えたんです。そのボリビアが、今度は、国連にこの条例を認めるよう提案しました。

地球そのものを生き物と認め、そこに存在する全ての自然に人間と同様の権利を認める。つまり、基本的地球権の尊重。ただ、そこで間違ってはいけないのは、人間が地球に権利を与えるのではなくて、地球にもともとある権利を再認識するということ。それはきれいな水と空気であり、人間が破壊したものを元に戻す権利そして、汚染から解放される権利。

この権利を認めれば、環境問題に従事する団体などが、人間と自然が調和を保って共存しているかを合法的に監視することが出来るようになり、これに反する国や団体を法的に裁くことが可能になるというわけ。

Evo Morales

どこかのファンタジー小説の中の話ではなく、これを提言しているボリビアのエボ・モラレス大統領は至って本気で、彼はこの提言に先立って、今年一月「母なる地球の権利」を自国内にてすでに制定済み。

彼がこの法律によって求めていることは、別に、野菜を殺して食べるな、ということではなく、地球に住む全てのものが調和の中で生活することで地球環境のこれ以上の劣化を防ぎ、人間を含む全ての生き物が安心して暮らせる環境を作るということ。

たくさん持つことが幸せの指数になっている今の資本主義消費社会。先進国は地球からありとあらゆるものを搾取することで幸福を実現しようとしていて、それで一部の人間は確かに物質的な豊かさは手に入れたように見える。けれど、自然はなおも破壊され続け、その結果起こっている温暖化や異常気象といった様々な自然の猛威によって、今度は私たち人間の存続が危うくなっているという矛盾。というか当然の報い。ボリビアのような貧しい国は常に搾取の対象としかならないのに、同じように環境破壊の悪影響を受けているのです。

今起きている環境破壊の根本原因は、全て、人間と自然は別の存在で、人間が自然より優位にあるという考え方にあり、人間は自然の一部だったんだと気づかされた時にはもう手遅れかもしれないわけ。そんな資本主義社会の大きな矛盾に釘を刺したこの法律は、ボリビアのスピリチュアルな先住民、アンデス民族たちの母なる大地“パチャママ”という存在に大きな影響を受けて作られたそう。

このことについて書かれた海外のニュースの中に、「もしこの法律を守るとすれば、今後ステーキを食べることは禁止されることになり、また、植物にも同じ権利が与えられるというわけで、ベジタリアン達は、肉を食することが大好きな我々同様殺人罪に問われるかもしれない。」という心からレベルの低い記事がありましたが、こういうことを言っている人間がいる限り、残念ながらなかなか実現は難しいのかも・・・。

ただ、こういったことを堂々と提言できるボリビアという国の精神性の高さもさることながら、それが国連という公の場で議論されるようになったということは大きな一歩であることは間違いないのではないかと。ボリビアがなぜ「黄金の王座に座る乞食」であり続けるのかがわかったような気がしました。

BY Beach Press E.N.